婚約指輪とは読んで字のごとく、結婚を約束した男性が誓いの証として女性に贈る指輪のことで、現在は欧米を中心に広く世界中で導入されている習俗である。特に法律で規格が決められているわけではないが、ヨーロッパの広範囲で行われている習慣がワールドスタンダードとして一般に流布している。欧米では特に「指輪」という文化が古来より根付いているためか、婚約指輪も結婚指輪も結婚後常時装着することが一般的であり、もちろん仕事中でも婚約指輪をはめたままである。逆に指輪文化の浅い日本では、せっかくの婚約指輪、結婚指輪を「大事にしまっておく」人が多く、また、仕事中に指輪をすること自体がなぜかタブー視されており、宝の持ち腐れに陥ることが多いのは残念だ。
婚約指輪の習慣が浅い日本で一般庶民が婚約指輪を贈るようになったのは戦後の話だ。近年ではたまにしか着けない婚約指輪に大枚費やすより、結婚指輪と婚約指輪を兼ねて、より豪華なものを贈るという人が増えているそうだ。デザインもそれなりに華やかなものが多く、結婚後はタンスの肥やしになることの多かったこれまでの婚約指輪と異なり、比較的日常的にも愛着を持って装着する女性が増えてきたという。
婚約指輪をはめる指は女性の左手薬指とされ、その形式は金属製の台座にダイヤモンドか誕生石を装飾としてあしらったものが一般的である。元々は西洋の習慣である婚約指輪だが、日本では「結納式」に巧妙に組み込んで贈られることが多い。結納式でやり取りされる品目は地域によって多少の違いがあるが、基本的に奇数をもって縁起をかつぐきまりがあり、婚約指輪が加わった分は一品目差し替えることで対応しているようだ。
婚約指輪を結納式で贈るについては式場の「結納パック」というものがあり、婚約指輪選定のアドバイスを行ってくれるところもある。「不景気」「地味婚」の風潮が広まってからは「どうせ戦後の新しい慣習なのだから」と結納式自体を省略するカップルが増え、婚約指輪だけをやりとりしたり、先ほども述べたように結婚指輪と婚約指輪を兼ねたりしてしまうことが多くなったという。しかし結納式は両家の正式な顔合わせでもあり、一種のイベントと気軽に捉え、むしろこうしたシチュエーションで婚約指輪を贈るという行為自体を楽しむのもよいのではないか。
婚約指輪を贈ることをあまりに大げさに捉えてしまう人がいる。その最大の要因は、婚約指輪にはそれ相応の豪華な品を贈らなくてはならないという妙な思い込みだ。ずいぶん以前、あるダイヤモンド販売業者が打ったテレビCMのコピー「婚約指輪は給料の3か月分」という根拠の無い説が大きく影響しているようだ。そもそも婚約指輪の習慣自体日本古来のものではないし、その金額まで具体的に定めたマナーが存在するいわれも無い。昨今の相場では、ほとんどのカップルが20万以下の婚約指輪を選んでいくという宝石業界の報告がある。だから婚約指輪については欧米におけるその精神の根本である「男性が女性に贈る愛の証」としての位置づけに注目し、若いうちはもっとフランクに、懐具合に見合った婚約指輪をやりとりするのがスマートではないかと思う。